読売新聞の一面に大きく記事が出ておりましたので、取り上げたいと思います。
資格試験や大学で憲法を勉強された方であれば、政教分離について過去いくつかの判例があり関心があるのではないでしょうか。私も政教分離の問題が出題された場合には、愛媛玉串料訴訟(最大判平9.4.2)のみ違憲で、それ以外の津地鎮祭訴訟(最大判昭52.7.13)や箕面忠魂碑訴訟(最大判平5.2.26)などの判決は合憲という覚え方をしておりました。
私が憲法を学んだ際に「なぜ政教分離しなければならないのか」という問題について、①歴史的に政治と宗教は結びつきやすかったこと、②政治的問題が宗教的教義に従った決定をされる場合には異議を唱えづらいこと、などがあったように記憶しています。そのため、津地鎮祭訴訟で示されたように完全に分離することはできないので、「目的効果基準」というものを使い政治と宗教の関わり合いを判断していました。目的が宗教的意義を持ち、効果が宗教に対する援助、助長、促進、又は圧迫、干渉等に当たるかどうかという基準です。
今回の砂川政教分離訴訟の最高裁判決では、「施設の性格、事案の経緯や態様、これらに対する一般人の評価など、諸般の事情を考慮して総合的に判断すべきだ」と述べ、目的効果基準とは異なる基準を示しています。
砂川市では空知太神社を特に援助しようとする意思があったように思えませんが、やはり行政は常に注意深く政教分離を意識しなければならないという裁判所の判断でした。また、最高裁は2審に破棄差し戻しすることにより、自治体に対し穏当な解決策を示しています(下記、引用参照)。
鎌倉市にも同様のケースがあるのか管財課に問い合わせたところ、調査しているとのことでした。結果がわかりましたら報告いたします。いずれにしても、有償又は無償で譲渡するか、賃貸借するなどにより、適法な状態にすべきです。
参考資料
2010年1月21日 読売新聞 朝刊社会面 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100121-OYT1T00182.htm
引用開始
私有地提供違憲 小さな神社に影響大 公有地上宗教施設 数千件の指摘も
憲法の政教分離原則に違反するかどうかが争われた、北海道砂川市を巡る住民訴訟。神社の敷地として市有地が無償提供されていたことに、最高裁大法廷は20日、政教分離訴訟として2件目となる違憲判断を示した。
公有地上に宗教施設があるケースは、「全国的に数千件にとどまらない」(砂川市の上告理由書)との指摘もあり、判決が与える影響は大きそうだ。
砂川市ではこの日、「違憲」判断を受け、菊谷勝利市長が記者会見。訴訟となった2神社のほかにも市内に2か所、市有地を無償で使わせている神社があることを明らかにした。
空知太神社について「関係者や弁護士らと相談し、最高裁の決定に従って一日も早く解決したい」と述べた上で、訴訟外の和解協議についても検討していく考えを示した。
財務省や文化庁などによると、神社は明治時代に国家管理となり、敷地も公有地化された上で無償で貸与された。しかし戦後、政教分離の観点から、「社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律」に基づき、無償で譲渡されるなどした。
国有地以外の公有地も国の通知によって同様の扱いになっており、現在、宗教法人化している神社約8万社の敷地は基本的に神社の所有になっていると見られる。
ところが、国内には宗教法人化していない“地域の氏神様”のような小さな神社や、神社と一体化し、ふだんは公民館として利用されている施設も多数ある。今回の両神社もこうしたケースで、大法廷は「無償譲渡の申請が出来ないまま、神社などの敷地になっている公有地が相当数残っていることがうかがえる」と指摘している。
また、公有地である公園内の慰霊施設で仏教式による慰霊祭が営まれていたり、殉教碑の前でカトリック式のミサが行われていたりするケースもあるなど、神道だけの問題ではないとの指摘もある。
自治体に穏当な解決策示す
政教分離を巡って最高裁が示した訴訟はこれまでに11件ある。1977年の津地鎮祭訴訟判決では、国や自治体の行為の目的が宗教的意義を持ち、特定宗教の援助や圧迫にあたる場合は意見になるとする「目的効果基準」が示された。宗教への行政の関与を全く許さないのではなく、社会通念に従って違憲線を判断するとの考え方で、その後の蘇峰もこの基準によって判断されてきた。
93年に判決が言い渡された「箕面忠魂碑訴訟」など、公有地上の宗教的施設が問題となった訴訟もあるが、施設を使う団体の宗教性が薄いとして合憲判断が示されていた。このため市側は過去の訴訟との類似性を強調したが、大法廷は、鳥居や祠(ほこら)といった神社神道に特有の施設があり、神道式の行事を行っていることを重視した。
大法廷は今回、「施設の性格、事案の経緯や態様、これらに対する一般人の評価など、諸般の事情を考慮して総合的に判断すべきだ」と述べ、目的効果基準とは異なる基準を示したが、違憲かどうかは社会通念に照らすとの考え方は崩していない。
また今回の判決で特徴的なのは、違憲判断をそのまま確定させずに、違憲状態の解決方法を示唆して2審に差し戻した点だ。1、2審判決は違憲状態を正すため、鳥居や祠の撤去を必要としたが、この場合、地元住民らの信教の自由を妨げる恐れがあるため、穏当な解決策を示したと見ることもできる。
大法廷はこの日、同時に言い渡した富平神社訴訟で、町会への敷地の無償譲渡を合憲とした。同神社の場合、町内会を法人格を持つ地方自治法上の「地縁団体」として認可した上で、私有地を無償譲渡しており、こうした手法や適正価格での賃貸借などの方法もあると述べた。同様の問題を抱える自治体に解決の方向を示唆したといえる。(間野勝文)
引用終わり
2010年1月21日 読売新聞 朝刊社説 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100120-OYT1T01284.htm
引用開始
政教分離判決 「違憲」は最高裁の注意喚起だ
市有地を神社の敷地として、無償で町内会に提供するのは、憲法が定めた政教分離の原則に違反するかどうか―。
これが争点だった訴訟で、最高裁大法廷が「違反する」との判断を示した。大法廷が政教分離に関する訴訟で違憲判決を出したのは、2例目である。
判決は、「一般人の目から見て、市が特定の宗教に対して特別の便宜を提供し、これを援助していると評価されてもやむを得ない」と指摘した。宗教とのかかわりについて、行政側に厳格な対応を求めたものといえる。
公有地に立つ宗教施設は、全国で数千か所に上るともいわれる。判決は、関係する行政機関に影響を及ぼすことになろう。
ただ、対象の施設をすべて撤去するのは現実的とはいえまい。今回の判決が、違憲状態を解消するための手段を検討するよう高裁に審理を差し戻したのも、こうした事情を考慮してのことだろう。
問題となっていたのは、北海道砂川市にある二つの神社だ。このうち、現在も市有地に立つ神社を巡る訴訟で、最高裁は「違憲」と判断した。
この神社は町内会館と併設されており、地元の町内会が建物を所有している。地域住民の集会などにも使われている。
最高裁は、この神社について、鳥居があることや、神式の祭事が行われている実態を重視した。
さらに、「宗教団体である氏子集団が宗教的活動を行うことを容易にしている」として、宗教団体の利用のために、公の財産を提供することを禁じた憲法に違反すると結論付けた。
一方、既に市から町内会に無償譲渡された土地に立つ神社についての訴訟では、合憲と判断した。無償譲渡について、「憲法の趣旨に適合しない恐れのある状態を是正解消するために行ったもの」と判断した結果である。
政教分離訴訟で、最高裁は1977年の津地鎮祭訴訟判決で示した考え方を基本としてきた。「国家と宗教の完全な分離は不可能に近い。政教分離を貫こうとすれば、かえって不合理な事態が生じることもある」というものだ。
日本では宗教と習俗の境界にあいまいな部分がある。この現状を考慮すると、30年以上を経た現在にも通じる考え方といえよう。
そうであっても、行政機関は政教分離の原則について、常に注意を払わねばならない。今回の判決は、最高裁のこうしたメッセージといえるのではないだろうか。
引用終わり

