鎌倉のマンション訴訟 建設業者、上告を断念 4月13日 読売新聞 33面(地域)

鎌倉市の大きな問題の一つに岡本二丁目マンション問題があります。本日の読売新聞の33面(地域)に行政訴訟を起こしていた建設業者が上告を断念したとの記事が掲載されておりましたので紹介します。

鎌倉市は建設業者が起こした行政訴訟に業者からの損害賠償を避けるため、補助参加をしておりました。しかし、松尾市長は補助参加を取りやめ、壊された階段の復旧すべく近隣住民と調整をしていました。近隣住民は今まで通りの原状回復を望んでおりましたが、市側は今まで通りの復旧であると建設予定地が接道要件を満たさなくなってしまうため、接道要件を満たせるような階段の補修を主張しており、両者の言い分は平行線となり、先に進まないということは私が予算特別委員会委員として委員会の中で質問し確認しました。

以下、引用開始

鎌倉のマンション訴訟 建設業者、上告を断念 4月13日 読売新聞 33面(地域)

 鎌倉市岡本のマンション建設を巡り、事業主の「小松原建設」(綾瀬市)が、市の開発許可を取り消した県開発審査会の裁決を取り消すよう求めた訴訟で、原告側は12日、上告を断念したことを明らかにした。原告側の責任者が同日、代理人弁護士に伝えた。市が出した開発許可を「違法」とし、原告の請求を棄却した2009年8月の1審・横浜地裁判決が確定する。

 1審によると、市の開発許可が05年12月に県開発審査会で取り消された後、原告は内容を変更して再申請し、市は06年4月に再び許可した。判決は「1度取り消された開発許可は、申請を出し直すべきで、市が『補正』しただけの申請を許可したのは違法」と指摘し、請求を棄却。2審・東京高裁も今年3月29日、原告側の控訴を棄却した。

 原告側の責任者は取材に対し、上告を断念した理由について、「工事は遅れる一方で、訴訟費用がかさみ、苦境にある。市の行政指導に誠実に従ってきたのに、これ以上、損害を被るのは耐え難い」と述べた。

 係争中に用地の高さ規制などが変わり、マンション開発の申請内容を大幅に変更する必要があるため、今後は市と協議をして、①用地を市有地化して整備を市に委ねる②新規の開発計画を立案して再申請する③他の企業に転売する―などの方策を検討するという。

 原告側は1審の敗訴後、市に損害賠償を求める意向を示してはいたが、現時点では考えていないという。

以上、引用終わり

開発業者側は企業の論理で、できるだけ損害を出さぬようにするのが当然です。おそらく①を一番考えているのでしょう。もともと接道要件を満たしていない土地買い取って、市の市有地提供で接道要件を満たすことができたその土地を市が買い取る場合には、a,接道要件を満たしていない土地として買い取るのか、b,接道要件を満たした土地として買い取るのか値段には開きがあると思われます。業者が買収していった土地の価格はaであるとするとbの値段で買い取った場合には不当な公金の支出に該当する可能性があります(妥当、不当の問題)。しかし、裁判になった場合には政治的な判断もあり違法とまでは言えないという判決が出るのではないでしょうか(合法、違法の問題)。

マンション開発の粗利は販売価格の10~20%位とマンション開発をしていた方から聞いたことがあります。つまり1戸当たり4,000万円のマンションが50戸販売する場合には4,000万円×50戸×20%=4億円(10戸分)となります。マンションが売れ残った場合に開発業者がマンションをたたき売るのは利益を確定させるためです。

今回のケースでは、開発業者からすれば、市が将来買い取るとした場合の価格から業者がその土地を仕入れた価格及び訴訟費用などのもろもろの経費差し引いた額が開発業者のマンション開発計画での粗利相当額かそれに近い額が確保できるのであれば、利益が確保できるため市に対する損害賠償請求訴訟の必要がなくなります。そのため、開発業者は「市に損害賠償を求める意向を示していたが、現時点では考えていない」とコメントしたと思われます。

地方財政法第4条には「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」としています。市が市有地を提供することにより接道要件を満たした土地の価格が値上がりするのは反射的利益であり、その反射的利益を盛り込んだ土地の価格で開発業者から土地を買い取ることは地方財政法第4条に反しないかどうか、これが今後の争点になると思われます。

反射的利益については、下記のHPをご参照下さい。

Yahoo Japan 知恵袋「反射的利益とはどういうものですか?」http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q109868235

一部、引用開始

<行政法上>

(3)『反射的利益とは、法が何らかの利益の実現を目指して或る行為を命令したり制限したりする結果として私人が受ける事実上の利益のことである。
すなわち、私人の利益を法的に直接保護するという訳ではない。
行政事件訴訟法第9条により求められる訴えの利益の有無を判断する際に重要な概念となる。
反射的利益の例として、医師法によって医師に診療義務が課される結果として患者が診療を受ける利益などがあげられる。』
(下記1の一番下(3)実定法における許可、認可などの用語について②許可と特許との違いの項参照)

(4)『市立図書館が遠方に移転したり、廃止されるとしたら、私たちが享受している利益が減少したり、奪われる結果となります。(中略)
市町村が図書館を設置、運営している、、、その行政の行為が存在することにより、反射的に利益を受けているだけであり、図書館が廃止されれば反射的に利益の享受を喪失する
このような性質のものであって、権利としては認められない利益のことを、権利と区別する意味で、法律の世界では「反射的利益」と呼んでいる』

以上、引用終わり

「中学生にわかるかな 法理学」---気まぐれ、執筆メモ---

http://www.zunou.gr.jp/hattori/tetu.htm

一部、引用開始

その2--権利と反射的利益-----------
1 権利とは、なにか、と言われれば難しいけれども、「ある一定の利益を享受(受ける)する力」とでも、定義する他はないと言われているかも。
2 この「一定の利益を享受すること」それ自体については権利性を云々する必要性や実益がないのかも知れないものの、この「利益享受」こそが権利の中核であることを理解しておく必要がある。
3 この享受が認められる各種利益には、さまざまなものがあり得る。
  例えば、物の所有権の場合には、
イ その物自体を利用する権能
ロ その物から生ずる果実を取得する権能
ハ その物を他の人に貸与する権能
ニ そして、最後には、その物を廃棄する権能
  例えば、債権の場合には
イ 債務者に債務の履行を請求する権能
ロ 債権を譲渡する権能
ハ 債権を免除する権能
4 この権利である「一定の利益を享受」することを妨害されるなどした場合、その妨害を排除する等の力がなければ、権利は絵にかいた餅となってしまいます。
 この「力の有無」が、「権利」と「権利でない反射的利益」の差違となるのです。
 私たちは、近くにある市町村の図書館を利用し、図書館を利用するという利益を享受しています。仮に、市立図書館が遠方に移転したり、廃止されるとしたら、私たちが享受している利益が減少したり、奪われる結果となります。
 この場合、図書館の廃止は許さない、私たちが享受してきた利益を侵害する、図書館廃止を中止しなさい、、、と裁判所に訴えることができるのでしょうか??
5 裁判所に訴えて、図書館の廃止を中止させ、従前から図書館を利用することにより享受してきた利益を確保できないとしたら、私たちが享受してきた利益とは、一体、なんなんでしょうか??
 市町村が図書館を設置、運営している、、、その行政の行為が存在することにより、反射的に利益を受けているだけであり、図書館が廃止されれば反射的に利益の享受を喪失する。
 このような性質のものであって、権利としては認められない利益のことを、権利と区別する意味で、法律の世界では「反射的利益」と呼んでいるのです。
 
 太陽がでれば暖かいし、陽が沈むと寒くなる!!
 
 (注--社会の構造が複雑になってくると、従前は、単に反射的利益と考えられていたものが、その後、一定の権利として認められるという事態も生じてきています。)
 
一部、引用終わり